普段は英語のことをガチャガチャ書いてることブログですが、今日は会社員時代のことを書こうと思います。
書こうと思った理由はふと思い出したからです。
さあどうぞ
人事採用担当時代の話。入社3年目のとき採用パンフレットを一新することになった。予算がなかったので代理店には頼まずフリーのデザイナーとカメラマン、ライターを探すところからスタート。デザインやコンセプト作成から始まり各社員インタビューや撮影など怒涛のスケジュールをこなした後やっと印刷、というところまで来たときに問題が勃発した。
事業内容や製品シェアの数字を営業部の室長に確認してもらう際、思わぬところでNGが出たのである。
私が勤めていたのは部品メーカーで、基本はBtoB。そんな中、メインの商品のほかにみんなが知っているようなBtoCの商品を一部作っていた。ところが営業部から返ってきた原稿を見ると、そのBtoCの商品をパンフレットから消すよう指摘が。人事部長に言いにいくと「載せた方が良いに決まってるだろ、お前交渉しに行けよ」とのこと。
アンタがしろよ😇と思いながら営業部のフロアへと出かけ、初めて話す営業部の室長に声をかけた。
「室長、原稿ご確認いただきありがとうございました、◯◯の商品を消すことについてお伺いしたいのですが・・」
「あーこれ載せたいの?」
「採用の思いとしてはより多くの分野に手を広げていることをアピールしたいので、載せたいです」
「手を広げてるって(笑)この商品は下火で、もう売り上げ◯億円くらいしかないよ?こんなん全体の売り上げのほんとに小さな部分なのにこんな風にパンフレットに載せたら良くないでしょ。これやりたいと思って入社してきてもらっても仕事ほぼないよ??俺たちも気分良くないわ。」
なんでこんなに怒ってるのか意味がわからなかったので、私も強く出ることにした。
「昨今の学生さんは部品に興味がない人も多いです。文系はそれが特に顕著で、いい人はみんなが知っている商品を扱っているメーカーに取られてしまいます。私はそれをいつも悔しく思っていて・・。シェアが少なくても、この分野に貢献できていることをアピールすることはそんなにおかしいことでしょうか?」
ちょっと熱くなってしまった
「・・この商品はな、俺たち営業部が部品だけじゃ生き残れないと思って20年くらい前に頑張ってシェアを伸ばしてきた分野なんだ。みんな一生懸命でさ、もっともっといろいろな分野に進出していこうってみんなで夢を語り合ってetc...」
室長の目はキラキラしていた。私はその話を聞いて目頭が熱くなるのを感じた。
「1990年代にはさ、◯◯もしようとかって話が出てさ・・・(略)」
「ええ!!そうだったんですか?!それは夢がありますね」
「だろ?」
その後、室長がいう「良かった時代」みたいな話が10分くらい続き、私も聞いてて楽しくなってしまう。ちなみに私はこういう話を聞くと涙脆くなってしまう方で、あふれる涙がどうにかこぼれないように室長の話を聞いた。
「私も過去の資料でうちの部品を使って色々な分野に進出していくぞ!みたいなのを見たことがあって。そういう風になっていってほしいと私自身も思っていたのに・・・なぜ今はそれが下火になってしまったんですか?今からでもシェアを伸ばすことはできないのでしょうか。」
「・・・10年前の経営方針で、◯◯の分野一本でやってくことになっちまったんだよ
その方が儲かるからって
それを決めたのが
当時経営企画部にいた、岸田。
アンタの今の上司だよ。」
人事部長のことだった。
「・・・そんな・・・」
「お前、岸田に言われて来たんだろ?
・・やり方が卑怯だよな。この分野はアイツが潰したのに・・今度はパンフレットに載せたいだなんてさ。どのツラ下げて言えるってんだよ」
そんなことがあったなんて・・・
あふれていた涙が別のものに変わる。
「だからイヤなんだよ
それが理由だよ」
「・・そんな事情があったなんて
私何も知らなくて本当にすみません。
でも本当のことを知れて良かったです。
今回の件は・・諦めます。
営業部の皆さんの思いを無視して、この商品のことをパンフレットに載せることはできません。
岸田部長には私の方で交渉してみます。
本当に申し訳ありませんでした。」
私が資料をまとめて帰ろうとした時
「・・・待ちな」
「はい」
「・・いいよ
載せな
アンタは悪くないし
まだこの商品扱ってるのは事実だしさ」
「えっ?!?!?!?いいんですか?!?
それじゃちょっと小さくしてとか・・」
「いいよそのままで
・・その代わり岸田には言っとけよ
貸し1だからなって」
「・・ありがとうございます😭」
「・・波風立てて悪かったな
お前もあんなヤツの下で大変だな
頑張れよ」
営業部から人事部のフロアに戻る時、堪えていた涙が一気に溢れ出た
なかなか板挟みになることも多い仕事だったけど楽しかったなぁ
あのとき、営業部の室長が掲載を許してくれたのは、あのとき私と心が通じ合ったからなのではないかと今でも思っている
私にとって、忘れられない会社員時代の思い出。
ー完ー